公演終了しました。公演というか、イベントというかですが・・・。僕は、脚本、演出、作詞作曲、出演をしました。全編を通して音が鳴りっぱなしだったのですが、それらも創りました。ラジオドラマを作るような塩梅に似ていますね。

池袋にある西武デパートの屋上から「何かやってほしい」とのオファーをいただきました。これも嬉しいことで、実はオファーしてくださったイベンターさん、高校時代におぼんろの『ゴベリンドンの沼』に参加してくださっていたことが最初の出会いだったとのこと。月日は流れ就職をし、今の役職につき、劇団宛に連絡をくれたとのことでした。この場所で演劇をやるのは初めてのことで、何をやってもいい、とのことでした。当初は、末原拓馬独り芝居でも良いです、みたいな感じだったのですが、色々考えた結果、僕は数十人のキャスト共に贈るショーを創ろうと心に決めました。
(all photo by 三浦麻旅子)
ショーというものと演劇というものがどう違うのかは人により定義が違うと思うのですが、僕に関していうと、実はテーマパークなどに行ってショーをみるのが好きな方でもなく、舞台のレビューショーなどにもあんまり心を惹かれないで生きてきたように思います。おそらく根っからの「物語の人」であることがその要因で、踊りそのものよりも「なんで踊っているの?」という方に心が持っていかれがちです。激しい踊りや歌を見れば心が動かされますが、その「激しい理由」に、僕はグッとくる。アーティストの場合は、僕はそのアーティストの人生であるとか、そのステージへの思いだとかを重ねて物語を想像します。で、そうでない場合は、やはり、物語です。登場人物たちが、なぜそこで歌うのか、踊るのか、というところに強く強く心を惹かれる。僕は演劇講師などを務める時は「上手い俳優より良い俳優になれ」というのですが、それは踊りの技術だけでなく、踊る理由を自分(もしくは役)なりにしっかり持って踊れるようになってほしい、という思いです。一歩間違えると、「思いだけで絶叫する素人演劇」みたいになりがちなんですが、真に思いを持っている人は、当然それを伝えるための技術は言われなくとも身につけます。 脱線しました。 要するに、僕は、パフォーマンス重視の演目でも、そこに介在する物語を重視していきたいな、という話です。これは、難しいところでもあります。言語があるものよりもノンバーバルの表現の方が万国共通になり得るのは当然ですし、僕らはもちろん物語大好き人間ではありますが、一般的には実は物語なんかなくてもただただ刺激的なものの方が好まれたりします。これはどっちがいいでも悪いでもないと思っているので、僕は僕なりに、「物語があって、そして刺激があり続けるパフォーマンス」というものを目指しました。
これは、実は上演場所にもよります。静かな地下の密室で行うのであれば、語りが多い演技の効果は絶大ですが、今回のように都会の真ん中の大空の下(しかも背後にはビアガーデン)が舞台とあれば、そうもいかない。これに関しては、僕は実体験を持って知っていて、過去に独り芝居を提げて地方を回っていた頃にショッピングモールでストーリーバリバリの物語をやって自分なりに負け戦だったことがあるのです。これは、悔しかった。別の会場でやった時は、お客さんみんな号泣!みたいな物語だったはずなのに、昼間のショッピングモールのイベントスペースでやった時には、自分でも「魔法をかけきれた」という感覚がなかった。要するに、想像力を阻むノイズが多い場所だからなのです。例えば、どんな実力ある催眠術師が広場の真ん中で五円玉を揺らして見ても、広場中の人間を眠らせることはできない。それに似ています。
ちなみに、それよりも前、路上時代にやり続けていた『ズタボロ一代記』は、ある程度そのあたりのことを配慮して創っていたものではありました。でも、当時の自分が人前で歌うことに強いトラウマがあったため、どうしても語りメインでした。 ショッピングモールでの負け戦以来、僕はうるさい場所でも通用するパフォーマンスのあり方を考えてきました。劇場内で物語をして勝てるのはわかっているのですが、そうではない場所で圧勝する方法を手に入れたかった。
近年、音楽を創ったり、自身も歌ったりするようになったりして、さらに、大人数の出演者を任されるプロジェクトや、「イベントに演目を出してくれ」というオファーなんかをありがたくもいただくことができて、都度、トライ&エラーを繰り返してきました。まだまだこれからとは思いますが、今後とも戦っていきたいな、と思っています。
物語を、歌で伝えるか、しゃべりで伝えるか、文字で伝えるか。それは、僕は相手によって変えればいいと思っていたりします。これは、物語の基本。相手の心を動かすためにやっているものなので、相手に合わせた語り口を修行したい。
なんだか長々と綴ってしまいました。 屋上公演、ご参加いただいた方、ありがとうございました! 終わった直後に、デパートから次回のオファーなどもいただけて、成果としても随分とうまくいったように思っています。観客に関しては250人以上(途中で数えるのをやめたそうです・・・)が参加してくださったらしく、西武の屋上としても快挙とのことで、とてもとても盛り上がった夜でした。
個人的には、「デパートの屋上」という、幼い頃に心を動かされた(僕だってヒーローショーにいったことはあります。悪者が「お母さんをさらっちゃうぞー!」といって客席に降りてきたのを見て怖くて仕方がなかったのを覚えています。以来、客いじりみたいのは怖いです。やってるけど。)場所で自分が子供を含む多くの方を相手に物語紡げたこと、とても嬉しく思いました。
今後とも、よろしくお願いします。 この次は、「なぜ僕がいまさら、一般公募の参加者と共に作品なんか創りたがるのか」という視点から、この野良プロジェクトによって何を成し遂げたいのか、なんてことを語りたいと思います。